【活動報告】宙色@Iデンティティ~若年女性へのLINE相談・居場所ピアサポート事業

2025年1月22日

この度、「赤い羽根 ポスト・コロナ社会に向けた福祉活動応援キャンペーン 居場所を失った人への緊急活動応援助成」を受けた活動「多様な困難とセクシュアリティとの交差性に着目した若年女性へのLINE相談・居場所ピアサポート事業」を実施しましたので、ここにご報告いたします。

活動概要

私たち特定非営利活動法人PROUD LIFEは、LGBTQ等のセクシュアル・マイノリティへの支援活動として、LGBTQ専門電話相談やLINE等でのSNS相談を実施してきました。しかし、「LGBTQ専門相談」という窓口にアクセスする当事者は、比較的セクシュアリティを受容しようとしている者が多く、受容できず否定している当事者はアクセスしづらい現状があります。

そこで、これまでの相談支援の経験や実績を活かし、虐待を含む家庭環境、精神疾患・発達障害、貧困、性的搾取などの複合的課題を背景にした生き辛さを抱えた若年女性(性自認含む)のセクシュアリティとの「交差性」に着目した相談窓口が必要であると考え、本事業を計画しました。

活動の内容としては、セクシュアリティを含む多様な悩みを抱えた25歳以下の若年女性(性自認を含む)を対象とした、LINE相談「宙色@Iデンティティ」(そらいろあっとあいでんてぃてぃ)を、毎週日曜日の19時~22時に実施し、「毒親、家出、家族の悩み」「学校、いじめ、人間関係」「性や性別の悩み」「発達障がい、メンタルの悩み」「摂食障害、リストカット」など多岐に渡る相談に乗り、LINE相談からオンラインやリアルでの居場所に繋げられるよう試みました。

LINE相談を行う相談員には、ピアサポートを志す若年女性相談員を積極的に採用し、ピア相談員の育成にも力を入れ、コーディネーターの相談指導や、外部講師を招いての支援スキルアップ研修会を実施しました。

X上ではネットパトロールを行い、「死にたい」など自殺リスクの高いツイートをしている若年女性ユーザーを対象にLINE相談に誘導することを試みました。

また、ネット上だけでなく、対面においても、繁華街を中心に、月に2回20時~24時に夜間パトロールも実施し、居場所のない若年女性に声を掛け、相談窓口と繋がれるような取り組みを実施しました。

活動の成果

活動の柱であるLINE相談では、私たちが実施する既存事業からの誘導のほか、周知カードを作成し、県内の女性センター等の公共施設や女性支援団体等へ周知協力をよびかけました。活動を始めたばかりであるにも関わらず、毎回数件の相談が入り、複合的な課題を抱える若年女性の多さが実感されました。若年女性向け相談窓口といっても、過度な女の子らしさを強調せず、性自認が典型的でない女性にも利用しやすい相談窓口として運営したことも効果的だったといえます。

相談内容としては、学生生活や人間関係にかかわる相談など様々な内容が寄せられましたが、背景に虐待など家庭環境の問題がある相談者や、精神疾患・発達障害を抱える相談者も多く見られました。LINE相談だけでは解決しきれない課題があると感じたケースでは、他の相談機関に繋げられるようアプローチしました。

本助成事業で得られたもう一つの成果として、事務所を移転し、居場所スペースを併設した事務所を開設することができたことがあげられます。これまでの事務所は、相談記録の管理など、重要な個人情報を扱うため、原則。外部の方が出入りできないものとなっていました。新しい事務所になり、部屋を区別することで、支援対象の女の子や、ピア相談員の研修などにも利用できるようになりました。

一方、LINE相談からすぐに居場所へと誘導することは難しく、相談・居場所・アウトリーチなど、様々なチャンネルが必要なことがわかってきました。そこで、より多くの方に相談窓口を知ってもらうためにも、ネットパトロールや繁華街での夜間パトロール等のアウトリーチが重要と考え、活動をひろげました。

ネットパトロールでは、生き辛さを抱え「死にたい」「しんどい」「苦しい」などのメッセージを発信している若年女性の多さがうかがえましたが、そうした若年女性に積極的に声を掛けLINE相談に誘導することで、実際の相談へと繋げることもできました。

対面での夜間パトロールでは、居場所に関するアンケートボードへの協力を促しながら宙色@Iデンティティのカードを配り、困った時に相談できる居場所があることを認識して貰うことができました。繁華街でさまよう若年女性の中には、虐待を受け家に帰れない少女や、性的搾取を受けている少女の存在も確認できました。

事業を実施する中で見えてきた課題と今後の取り組み

私たちは、SNS相談という窓口を設けて、困難を抱える若年女性の支援への取り組みをはじめましたが、ネットパトロールや夜間パトロールの中で実感されたのが、「相談」に対するハードルの高さです。相談機関をはじめとした「大人」に対する不信感などから、彼女たちは「助けて」という言葉を言えず、どこの支援にも繋がれずに自分達だけで問題事を解決しようとしているという現状があります。

この点では、これまで私たちが実施してきたLGBTQ専門相談は、他に相談できる場所がない中で、相談場所を見つけて積極的に相談してくる場合が多く、かなり様相が違うことがわかりました。

若年層に身近なツールを使ったSNS相談を継続しつつ、相談窓口への自然な導線を確立するためのアウトリーチや、温かいご飯が食べられて、同じような境遇の女の子達が交流でき、対面で困りごとの相談を行うことができる居場所を提供することなど、一連の取り組みがあってこそ、より効果的な相談窓口を設置することができると思われます。

また、相談だけでなく、さらに踏み込んだ支援を行えるよう、緊急避難用の一時シェルターを確保することも課題となっています。

今後は、これまで実施してきたLGBTQ専門相談を継続するとともに、「宙色@Iデンティティ」の活動を通して、セクシュアリティを入り口としない幅広い支援活動を地域を基盤に展開し、多様性が尊重され、誰もが共生できる地域社会づくりをめざしていきます。

この活動は、「赤い羽根 ポスト・コロナ社会に向けた福祉活動応援キャンペーン 居場所を失った人への緊急活動応援助成」による助成を受けて活動しました。ご寄付をくださいましたみなさま、ありがとうございました。